詩*今ある全てにサヨナラを(1)


揺れ

そうだあれを ゆれ と呼んだ
ベッドの軋み
白いシャツの波紋
枕はふたつあって
その感触の違いを楽しんだ
あれが昨日だ
小窓から差し込む燈
暮れかけた空を映して染まる全ての白に
罪をおしつければいい

想像するのは難くない
yes.
口に出して前に進むのも、さして
けれどかたくなに開かない後ろへの道は
回答も、悔恨も、示さないままに
うしろめたさによって閉じられる

なんでもかんでも肯定してしまえば、いい
自分の立つ瀬のあやうさも
ふりかえることのできない歪さも
それで、いい
罪をおしつければ、いい
放り出して過ぎ去ってきたものたちに
まかせてしまえばいい


ぼくたちは
飲み屋の女の子にも平気で恋をする
そういう生き物で
それを感傷と呼んで間違いないのなら
この世で在りうるものはすべてお金で買えると
そしてその殆どは存外に安価だと
肯定しても、いい
その ほの赤く染まった心の像の
こころばかりの残像を
捨てなくてもかまわないと
つまり、捨ててもなんの問題もないと
するりとこぼせるようになるのなら


"そんな感傷の凹凸にけつまづいたぐらいで
 おおきく揺さぶられるほうがどうかしている"

yes.
折れ易いこの身体に誓われた
たおやかな心のゆらめきは
総じて解決されうる類のものだ
それは間違っていなくて
じゃあなんだ
この縦揺れの音楽と
夕焼けのあつさは


ああ
ゆうぐれている
胸焼けするほどに
赤く