10月7日

思ったより片付けが長引き、午前中の仕事に寝坊。うへえ、と思ったら台風で世間全体がどうしようもなくなっていた。結果、事なきをえる。気をつけねば。

 

のどがかわいてしょうがない。この部屋に原因があるように思う。部屋の様子もひどい。なんとかせねば、と思いつつ、手を打ててない。へんな時間に寝てしまった。夕方、ふかさわさんと打ち合わせ。

 

Iガキさんのこと、ヒエラルキーのこと、考える。考えたこと、思い出す。

Iガキさんは千住でいちばんヒエラルキーの高い人、と店長が言っていた。本物の輩。昨日の客のような小悪党がたまにIガキさんに絡んで、いわされることがある。いっぺんなんかはIガキさんのお連れの人にちょっかいかけて、結果鼻を折られて鼻血出してた、それでTシャツに鼻血ついて、しおらしくなっちゃってTシャツ弁償に5000円払わされておまけに鼻も折られてた。

まあそういう経験も必要かも、と思わなくもない。

 

 

 

  回転するになちゃん

 

側転するからかぞえてて、と中庭で、になちゃんが言って

それをみていた

いち、に、さん、何回も何回もになちゃんは連続して側転して

側転して側転してうまいことみくらさんのまわりをまわる

 

生け垣の外には山茶花が葉を伸ばしており

つきかかった花がぼったりと落ちる日 を、想像する

はやい秋の午後、東京、リフォーム現場

足場板をわたしたら材料を置くとこもないじゃん

と先輩がぼやく庭、

を、あるいはあれは椿だったか

ゆるくついた息が外壁に押し出され

その風みちを花弁が転がり

アスファルトに落ちる

 

夏を見返すと

それはこの冬まで繋がっていて

切れぎれの前髪から変わり目をさがしていた

になちゃんは側転しながら屋内へ、玄関を通って通学路へ

赤いランドセルをひっかけてまだまだ回転し

六年生のいっちゃんは になはアホやから、とぼやく

あたまがおかしいんよ、いつまでもやっとるそ

みくらさんは言う

いっちゃんは側転、しないの

私はやらん(疲れるし)

 

たまたま入った風呂屋では

背中を流してくれた女の子が

(そういえばずいぶん古風な桶を使っていた)

あたし、ほんとにばかで、これくらいしかできること、ないから とすこし笑い

それが下手な標準語で、ぼくもすこし笑った

店を出て湯気を冷やすと

ビルの隙間を赤い桶が転がっていく

 

になちゃんは側転の途中で、

うまいこと靴を脱いで それが中央公園におきっぱにしてある

になちゃん、くつ

と いうと

もうはけんからいらんの

でも、持って帰んな

になちゃんは駆け寄ってきて、靴を拾い、僕のみぞおちにせいけんづきを入れて

夕方になるのでまわりながら山ぎわへかえった

 

 公園のかたづけをしながら

 みくらさんお子さんの予定はないんすか

 と、聞くと みくらさんは

 たにくんもけっこんしてみなよ

 と言って、にっと笑った

 

 

たにさん数えとってー え、みくらさんは

 ろくじゅうさん、まで数えてみくらさんはギブアップした もうかんべんしてー

まじかー自分で数えなよ じぶんでかぞえたらわからんくなる

 僕もわからんくなる(笑) なんで、おとなやん

おとなでもわからんくなるの? なるなる~ おかしい おかしいね

 二、三歩駆けて、になちゃんは回る たにさんもできる? できるよ~

僕も一度、二度、まわって (みくらさんはにやにやしながら見ていてずるい)

 たにさんあんまきれいじゃないね げろげろ~

じゃあ数えとって え~~~ いいから

 になちゃんは回る 僕が数えてなくても

僕は聞きたくなる

 になちゃん、雪降ったらどうする?

あそぶ

 側転するの?

でも、そんなこと聞くのは、ずるだ

 できんやん

できるよ、

 雪降っても、アスファルトの上でも、

でも谷さんへたやん(笑)

 そうやね(笑)